バラエティショップやドラッグストアに売っているようなプチプラコスメから、デパートで売っているようなデパコスに至るまで、全てのコスメ販売コーナーが、コロナ禍で販売形態の調整を余儀なくされました。
テスターは全て撤去され、タッチアップもなくなり、検討中の商品を自分の肌に載せることすら難しくなっていました。つまり、店舗に行って実物を見ても、「眺めて終わり」に近い状態で購入しなければいけなくなったのです。
コロナの影響を大きく受けたコスメ業界は、2020年以降「化粧品全体」としての売り上げが大幅に減少しています。コスメ業界にも変化が求められる状況の中、SNSを活用したライブでの商品紹介や、AIやARといった最新技術を活用したバーチャルメイクサービスなど、様々な新しい取り組みがなされています。
その取り組みの一つが、コスメ販売の分野でのオンライン接客です。アパレル業界にもオンライン接客の波は見受けられますが、コスメ業界も例外ではありません。今回は、コスメ業界でのオンライン接客が効果的な理由や、オンライン接客を導入済みの企業紹介、オンライン接客を成功させる秘訣をご紹介します。
コスメ販売でオンライン接客が効果的な5つの理由
コスメ販売でオンライン接客が有効なのはなぜでしょうか。種類を問わず、化粧品全般は人の肌に直接つけるものですから、通販やオンライン接客は一番相性が悪いと言っても過言ではないはずです。
色味や質感についても、写真や動画だけでは伝わりきらない場合が少なくありません。コスメ販売の場ではオンライン接客が圧倒的不利に思えます。では、なぜオンライン接客がコスメ販売に効くと言えるのでしょうか。データと共に見てみましょう。
まず、主な理由は以下の5つです。
- ネットでコスメを購入する人が増えている
- 知らないルートからのリピーターが増えている
- 自分の肌で試せないまま購入することに慣れと術を持っている
- お気に入りのコスメブランドには絶対の信頼を持っている
- 購入者のアフターサービスができるようになる
一つずつ見ていきましょう。
ネットでコスメを購入する人が増えている
ECサイトやメーカー公式サイトでコスメを購入する人が増えています。NTTコムリサーチの「化粧品購入行動に関する調査結果」では、ECサイトや公式サイトでコスメを購入する人が、コロナ前より増えていると示されています。
対して、デパートやバラエティショップでの購入率は下がっています。
総じて、店舗ではなくオンラインでコスメを購入するお客さまが増えているということです。
オンラインでコスメを購入する場に、ビューティーアドバイザー(BA)やスタイリストによるオンライン接客の場があれば、お客さまはより安心して各コスメを購入することができます。
肌の悩みや、商品の色味・質感の相談、おすすめのメイク方法など、通常デパートやショップに行かなければ聞けなかった内容を、オンライン上でプロに相談することができるのです。
オンライン購入でありがちな、「肌に合わなかった」「思っていた色味や質感と違った」「自分に似合わない色だった」といった失敗リスクを大幅に減らすことができます。
ブランドにとってもメリットがあります。オンラインで購入するお客さまは、概して商品またはブランドのリピーターであることが多いでしょう。つまり、何かの商品を一点狙いで購入する可能性が高いわけです。
しかし、気軽に使えるオンライン接客サービスがあれば、店舗での接客と同じく、オススメの組み合わせ(Ex.お客さまが買おうとしているアイシャドウに合う口紅)でクロスセルを促せたり、次回新商品の案内をしたりすることが可能になります。
知らないルートからのリピーターが増えている
一見怖い事象ですが、決して怖い話ではありません。近年のコスメ購入者の多くは、正規商品を二次流通によって手にし、一種のテスターとして活用する傾向にあります。
株式会社アイスタイルの「@cosmeにおける二次流通での化粧品購入実態調査」によれば、アンケート回答者の5割強がフリマアプリやオークションサイトに代表される、いわゆる「二次流通」にて化粧品を購入した経験があるようです。
主な目的には、「少しでも安く買いたい」「化粧品を試したい(試し買い)」が挙げられています。興味深いことに、二次流通で化粧品購入経験がある人のうち7割は、その後「正規販売ルートにてリピート買いをしている」と回答しています。つまり、私たちの知らないところでお客さまは商品を既に試しているのです。
「知らぬ間のリピーター誕生」現象は、先に挙げた「ネットでコスメを購入する人が増えている」要因の一つなのかもしれません。一度試して気に入った商品であれば、オンラインサイトにて購入することにリスクも抵抗感もほとんどないので、店舗に一度も足を運ぶことなく、オンラインで購入し続けているお客さまも一定数以上いるのではないでしょうか。
とはいえ、オンライン接客サービスがない中で何かしら相談したいことがあったり、別のラインや色と比較したかったりすれば、どうしても店舗に行く必要が生じます。もしオンライン接客サービスがあれば、お客さまが悩みや疑問をもった瞬間に、オンラインで悩みを解消したり商品の特徴を案内したりすることが可能です。
肌質の悩みや、商品の発色感、質感など、店舗での接客経験が豊富なスタッフであれば、オンラインでも変わらないクオリティで接客をするノウハウをもっていることでしょう。
自分の肌で試せないまま購入することに、慣れと術を持っている
コロナが蔓延して様々な制限が必要になって早3年が経とうとしています。身も蓋もない話ではありますが、特にポイントメイク系商品に関しては、「自分の肌で試せないけど購入する」ことにお客さまも慣れてきています。
最近では、SNSで一般の人がスウォッチ画像を上げていたり、メイク動画を載せていたりするので、オンライン上でもかなりリアルな情報を集められるようになっています。情報収集のための媒体が多様化しているのです。
パーソナルカラーや顔タイプの知識が広まったことも、オンライン接客が効く大きな要素です。自己診断でも自分のパーソナルカラーや、顔タイプを知っている人は増えています。
「パーソナルカラーに合ったメイクをしたい」人が増えているので、たくさんのカラーバリエーションの中から商品を選ぶ際には、自分のパーソナルカラーに合うかどうかを気にする傾向にあります。
SNSや店頭ポップ、オンラインサイト上で「イエベ/ブルベ大優勝カラー」といった文言を目にすることも多いのではないでしょうか。
とはいえ、SNSや口コミで「イエベ/ブルベに合う」と謳われていても、必ずしも有識者が発言しているわけではないため、情報の信憑性という観点からは不安が残ります。オンライン接客にて、BAやスタイリストが公式の意見として「イエベ/ブルベの人にお勧め」とアドバイスできるならば、お客さまにとっては最も信頼できる情報として参考にすることができます。
初めて使う商品をオンラインで購入する場合、確実に信頼できる筋からの情報と後押しがあるかどうかは、購入者のモチベーションとブランド、サービスへの印象を大きく左右します。
この2〜3年で、オンライン限定サービスの「バーチャルメイク」を導入している企業も増えています。自分の顔写真を使って、口紅やアイシャドウを写真上で付けることができるサービスです。
バーチャルメイクのシステムとオンライン接客システムが併用できると、店舗でBAにタッチアップしてもらいながら商品を検討するのとほぼ同じ流れが、全てオンライン上で可能になります。
お気に入りのコスメブランドには絶対の信頼を持っている
プチプラコスメかデパコスかに限らず、多くの女性がお気に入りのコスメブランドを持っています。例えば、「○○の商品は肌に合う」「■■のコスメはいつも発色と持ちが良い」など、ブランドのリピーターたちは新商品であるかどうかに関わらず、ブランドそのものに経験に基づいた一定の信頼を持っています。
特にデパコスに見られる話ですが、最近は各ブランドがシーズンごとに数量限定で新色や新商品を発表します。多くの場合、事前にオンラインか店舗で予約購入ができるようになっています。予約商品の場合、店舗に実物があることは少なく、あってもディスプレイ用である場合も少なくありません。
シーズナル商品を予約する場合には、当然タッチアップなどできないまま予約を決めなければいけません。このような予約購入をするお客さまたちは、ブランドへの信頼を前提に購入していると言えます。
仮に店舗に行ったとしても、目当ての商品が自分の肌に合うかどうかは分かりません。公開済みの商品画像か、雑誌のプレスが出している情報を元に検討するしかないわけです。それでも予約だけで販売分の多くが売れたり、発売日に公式通販がサーバーダウンしたりするのは、お客さまがブランドと商品に対しての良い体験と印象、信頼をもっているからでしょう。
コスメにも、オンライン限定サイズやオンライン限定カラーの商品が存在します。サイズ違いはまだしも、オンライン限定カラーに関しては、多少勇気の必要な買い物となります。販売場所が限られているからこそ、SNSなどにも情報が少ないからです。
しかし、もしオンライン接客で新商品や限定商品についての情報をいち早く正確にキャッチできる…となれば、ブランド常連のお客さまにとっては非常に嬉しいサービスになるでしょう。オンライン接客によって、さらにブランドのファンを増やせるかもしれません。
オンライン接客であれば、対応するスタッフもこれまでお客さまがどんな商品を購入しているのか、他に何の商品に興味を持っているのか、自社製品のどんなコスメがハマりそうかなど、お客さまのデータをリアルタイムで確認しながら接客することができます。
購入者のアフターサービスができるようになる
コスメ業界には意外とないアフターサービス。基本的には、店舗またはオンラインで購入したら終わりではないでしょうか。でも、購入場所がどこであろうと、いざ何日かコスメを使用してみたら悩み・疑問が出てきたなんてこともあります。
それは決してクレームではなく、純粋に悩みです。例えば、「買ったはいいけど、手持ちのコスメとの色合わせが難しかった」とか、「買ったスキンケア商品を手持ちのスキンケア品と合わせたら、どの順で使ったら良いのか分からなくなった」とかです。
このような悩みでたくさんのお客さまが店舗に来られると、さすがに店舗としては通常営業が難しくなって困ることでしょう。でも、もしオンライン接客で対応可能になったらどうでしょうか。購入履歴と照らし合わせつつ、お客さまの相談に乗ることができれば、せっかく買ってもらった商品が捨てられたり売られたりすることなく、お客さまに改めて気に入っていただけるのです。
もちろん、永遠とオンラインで相談に乗ることは現実的ではないので、一人あたりの時間や回数などを制限する処置は必要かもしれません。
オンラインでの相談の時間は、その瞬間が売り上げに直結するわけではありません。しかし、お客さまには高いCXが残り、特定のブランドでコスメを固める意義が出てきます。近年の新規獲得が難しいとされているロイヤルカスタマーを獲得できるチャンスにもなります。お客さまにとってもブランドにとっても、Win-Winなサービスとなります。
次々と参入し、とりわけ若年層に大人気の海外コスメ。自社が確立している信頼度を武器にするには、オンライン接客はもってこいのサービスでしょう。
オンライン接客を導入しているコスメ企業事例
次に、既にオンライン接客を導入している企業の一部を見てみましょう。
- ポーラ
- コーセー|コスメデコルテ
- オルビス
- クラランス
- 資生堂
ポーラ
2020年6月から、zoomによるオンラインカウンセリングサービスを導入。肌質診断を店舗だけでなくオンラインでも実施しています。事前予約制で、一人あたり約30分間のカウンセリングを受けることができます。「オンラインでも親身に話を聞いてもらい、距離が近く感じた」「購入を検討している製品があり、ネットの情報のみだと不安だったので、直接相談ができてよかった。」など、利用したお客さまからも好評です。
コーセー|コスメデコルテ
以前からzoomによるオンラインカウンセリングを実施していたようですが、新たに「DECORTÉ Personal Beauty Concierge(コスメデコルテ パーソナルビューティ コンシェルジュ)」を導入し、それまで抱えていた課題をクリア。化粧品の色や質感を画面上でリアルに再現することに成功し、接客から購入までのカスタマージャーニーを一元化することも可能になりました。こちらも事前予約制で、一人あたりの時間は約30分です。
オルビス
オルビスでもzoomによるオンライン接客を導入しています。オルビスでは、予約無しですぐにBAに繋ぐことができ、15分間で気楽にオンライン相談ができるコースと、事前予約制で45分間じっくり相談できるコースの2つが用意されています。
15分コースと45分コースの使い分けや、サービス分けが明確にされており、お客さまにとってもブランドにとっても使いやすいサービスです。zoomアプリの事前ダウンロードは個人で行う必要があります。
クラランス
海外の事例として、クラランスが「クラランスアンドミー」というサービスを米国・英国でスタートさせました。現在では日本でもサービス展開されています。事前予約制で、3人のビューティコーチがパーソナルカウンセリングを行ってくれます。
カウンセリングはメイクに限らず、「パーソナルボディケア」、「パーソナルフェイスケア」、「マタニティケア」と幅広くコースが展開されています。スパ発祥のメソッドを紹介するなど、ブランド独自で持つ強みを最大限活かしたオンライン接客サービスです。
資生堂
2020年10月から、ビューティーコンサルタントによるオンライン接客サービスを開始。ビデオ通話、電話、LINEと3つのチャネルが用意されており、お客さまの相談内容レベル、都合に合わせたチャネルを選べます。
事前予約制の「氏名コース」も用意されており、担当スタッフのパーソナルカラーや得意とするメイクジャンルが公開された上で、誰にカウンセリングをしてほしいか選べるようになっています。予約無しで今すぐアドバイスを受けられるクイックコースも用意されています。
いずれの企業も、何かしらのビデオ通話ツールを導入しつつ、ブランド独自の強みを活かせるようなサービスの展開をしています。
予約無しですぐに相談できるコースと、事前予約をしてじっくり相談できるコースとの2つが用意されていると、お客さまの相談したい内容や都合に合わせて使い分けてもらえるので、お客さまにとってもブランドにとっても効率的と言えるでしょう。
LiveAssistはコスメ販売に最適なオンライン接客ツール?
先の導入事例で複数見受けられたビデオ通話ツールはやはりzoom。コロナ禍で使い慣れた人も多いはずなので、zoomの利用に不便さを感じる人はあまり多くないかもしれません。とはいえ、アプリを事前に入れておくのは手間になってしまいます。
LiveAssist(ライブアシスト)は、コスメ業界のオンライン接客に有効でしょうか。LiveAssistを特にオススメする3つのポイントをご紹介します。
- アプリのダウンロードが不要
- 共有画面への書き込みが可能
- フォーム入力の支援機能
アプリのダウンロードが不要
お客さまにとっても企業にとっても嬉しいポイント。既に完成されているブランドサイトに埋め込むだけで、すぐにオンライン接客の基盤を作ることが可能です。お客さまも一切アプリを入れる必要がないので、何かを相談したいと思った瞬間に、オンライン接客サービスを開始、または予約をすることができます。
相談したい内容が些細なことに思える場合、オンライン接客サービスを利用するための手間を面倒に感じてしまいがちです。「アプリをいれなきゃいけないならやめておこう」「事前予約大変そうだしやめとこう」と感じてしまうのです。
せっかくのオンライン接客サービスが、事前にかかる手間のせいで活用されないのは非常にもったいないですね。可能な限りお客さまの手間になることをそぎ落として、店舗に行くよりも、SNSで情報収集するよりも、オンライン接客サービスを使う方が楽だし、安心と思ってもらえることが理想です。LiveAssistならそれが可能です。
共有画面への書き込みが可能
珍しい機能ではありませんが、あった方が絶対に良い機能の一つです。例えば、5色のアイシャドウパレットに関しての相談が来た場合、商品画像や独自の写真/イラストの画面を共有しながら、まぶたに乗せる色の順番や、乗せ方などを書き込んでいくことができます。
口頭で説明できる内容ではありますが、視覚情報として説明できた方が分かりやすく、確実にお客さまに伝えられます。共有画面での書き込み機能を駆使すれば、オンライン接客中の効率やクオリティを向上できること間違いなしです。
フォーム入力への支援機能
これは少し珍しい機能かもしれません。購入のためのフォームや、アンケートフォームなど、接客担当者が代わりに入力してあげることができます。もちろん、クレジットカードの番号など、お客さまにとっての機密情報をピンポイントで隠すことも可能です。
もしお客さまが機械類に弱かったり、操作に不慣れであったりとサポートを要する場合でも、オンライン接客中に商品を購入/アンケートに回答する必要が生じれば、スタッフがお客さまに情報を聞きながら代入していけます。オンライン接客中に技術面でのサポートも万全に行えます。
オンライン接客でSNSを味方にすれば最強
店舗でのテスターやタッチアップが戻り始めている今、これからオンライン接客サービスを始めたところで浸透するのだろうかと思われますか。
確かに続々と、テスターやタッチアップのサービスはコロナ前のように戻ってきています。しかし、お客さまの感覚までコロナ前に戻っているわけではないようです。既出の「@cosmeにおける二次流通での化粧品購入実態調査」によれば、多くの人がコロナの終息後も店頭での化粧品テスターの使用を躊躇すると回答しています。つまり、オンライン需要も変わらず見込まれるのです。
最近はCMなどの広告以上にSNSが影響力を持っていると言っても過言ではありません。SNSで話題になれば、たった一日で商品がバズることもある時代です。
オンライン接客による良いサービス、購入体験が提供されれば、自ずとオンライン接客に関しての投稿がSNSに上がるようになるでしょう。高い影響力をもつ「インフルエンサー」たちにオンライン接客サービスを使ってもらったり、宣伝してもらったりするなら、一種の広告として話題になることも期待できます。
お客さまがテスターに躊躇するようになったことも含め、コロナ禍で作られたコスメ業界でのニューノーマル。「商品がコスメである以上、対面でないと無理」はもう時代遅れなのかもしれません。今後は、お客さまの肌に触れずに接客し、商品の魅力を伝える体制作りが求められていくでしょう。
最後に
コスメ業界にも、AIやARといった最新技術は続々と導入されています。気づけば、美容業界とITは切っても切れない関係性になりつつあります。様々業界で叫ばれるDX化。コスメ業界も他人事ではないようです。オンライン接客を導入すると、「対面じゃなくてもできる接客/サービス」が増えるどころか、「オンラインだからできる接客/サービス」が生まれるのではないでしょうか。